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東方に聳え立つ、クレバニオン山脈の荘厳な山々の雪を頂く姿と、鮮明な深い碧に萌える碧の木々たちを、鮮やかに映し出す静かな湖面は、朝の眩しい光をいっぱいに受けていた。
この大陸のほぼ中央に位置する、偉大なる潤いの女神、大湖ルナージュには及ばないまでも、
その美しい湖は心の拠りどころとなるのに何の不足もなかった。
その静寂の中には、神々しさにも似た力強さと、全てを包み込むような温かな優しさとが湖水で揺らめく波のように交互に感じられるようだった。
それはまさにここより遠き南方にある、大湖ルナージュと並び称されるに相応しい姿であった。
その美しい風景を、疲労感を漂わせつつも、満足そうに見つめながら、馬に騎乗した男がゆっくりと湖畔を進んでいた。
男の行く先には一軒の屋敷があった。
まるで、湖の美しい風景に溶け込むように調和している。
大きくは無いがその造りの確然とした姿は貴賓をもかもし出している。
男はその屋敷の姿にも、有名な画家が描いた美術品を見つめるような目をして、とても満足そうだった。
しばらくぼんやりと楽しんでいたが、何かを思い出したように、疲労感を首を振って振り払い、馬の腹を蹴ると、歩む足の速度を少し速めた。
やがて屋敷の門の前に辿り着くと、馬は気分を換える様に鼻を鳴らした。
門はしっかりとした木材で出来ているようだった。
塀は石造りで、ところどころに石の隙間の空いたところから植物のつるが出て、それが塀の外観を美しくそして立派に感じさせていた。
男は馬を降り、門をくぐって屋敷の玄関へと向って行った。
屋敷の造りはとてもシンプルで整理された街の造りにも似ていた。
部屋や廊下をはじめ、全てに木材が使用されており、機能的な造りの中にも暖かさを感じられる。
玄関から廊下を奥えと進み、思い当たる部屋の前まで来ると、ノックもせずに扉を開けた。
東側の窓の光が少しまぶしく感じると同時に、
朝の澄み切った風邪が、レースを揺らし、開かれた扉から屋敷の奥へと流れ込んでいった。
男は、部屋の隅々にまで目をはしらせた。
落ち着いた感じの茶色の家具が、幾つか部屋には置いてあった。
光沢はあるが、嫌みはなく、落ち着いた鈍い輝きが、
その家具の歴史と、工芸師の人格をも表すようだった。
客間であろうその部屋には、調度品も飾ってあったのだろう、
所々、違和感のある空間が空いていた。
その空いている空間の一つに、この部屋には似つかわないものがあった。
一つは薄汚れた革の袋で、小さい子供なら入りそうな大きさのものだった。
防水加工を施してあるのだろう、はねてついた泥が浮き上がっている。
そして、もう一つは、その革の袋のすぐ横に、
壁に立てかけて置いてあった、長く、大きな剣である。
それは、扉を開けて入ってきた男の身長を超えていた。
この部屋で、いくらかの時間を過ごしていた、この屋敷の客のものであることに違いはなかった。
どうやら、扉を開けた男は、その客に会いに来たようだった。
部屋を見渡すが、誰もいない。
男は、足を進め、窓側に歩いていく。
何かに気づいたらしく、窓の外の音を拾うときびすを返し、足早に部屋を出て行った。
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